ベンチャーの経営においてコピーされない競争優位性の築き方

ベンチャーの経営においてコピーされない競争優位性の築き方
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ビジネスモデルで勝ち続けられるベンチャー企業はほんの一部です。ずっとオンリーワンでいるのが難しいからこそ、ベンチャー企業はその組織文化やカルチャーを確立することが重要です。真の競争優位性を築くために、醸成するべきカルチャーとは?

ビジネスモデルでずっと勝ち続けられるベンチャー企業は、一体どれくらいあるでしょうか?

私は「うちのビジネスモデルは3年以上オンリーワンです」と言える経営者は多くないと思っています。

なぜならば、スタートした時点でも近しいビジネスモデルの企業はたくさん存在しますし、成功したビジネスモデルなら2番手、3番手が出てくるからです。現実として事業の世界はパクリパクられの世界ですね。

では、なかなか他社に真似されないものとは一体何なのか。今回はこれについて語ろうと思います。


  • ベンチャーが磨くべき要素
  • 組織能力を鍛えるタイミング
  • 育成サイクルはあるか

ベンチャーが磨くべき要素

世の中多くのベンチャー企業が存在しますね。2020年から2021年の1年間の新設法人数は15万以上だったといいます。

しかし、中小企業庁が公表しているデータによると、ベンチャー企業の10年後生存率は6.3%、20年後はたった0.3%です。 
多くの企業が生まれても、その多くは長く続かず消えていくということです。


例え独創的で「これは社会にない!」と自信を持って始めたビジネスモデルでも、それが上手くいくと分かれば真似をされます。オンリーワンでいられるのは現実的に1年くらいかと思います。「自分が考えたモデルなのに」となりますが、

どうにもできません。それがビジネスの世界だからです。


しかし、会社が存続し続けるためには、多くの似たようなサービスが増える中で「競争優位性」を築き上げる必要があります。それが簡単に真似されないものだと頼もしいですね。


私は、それを実現できるのが組織能力/組織文化だと思っています。


これは一朝一夕で真似できるものではないです。例えば、「セールスフォースのような組織を目指そう!」と決めて取り組みを始めても、1ヶ月後にコピーできるわけがないです。
わずかに近づいているかもしれないですが、たどり着くには5年も6年もかかる可能性があります。ましてや、たどり着けない可能性も大いにあります。

コピペが比較的簡単なビジネスモデルと違い、その組織に根付いた能力や文化は簡単に他社が真似できるものではありません。社員を育成する組織能力とスピード、どちらにせよです。

20年ほど前は中途採用で「元リクルートの社員が欲しい!」といった風潮がありました。リクルートという組織のブランド、能力が評価され、個人の価値も認められていたのです。このように、組織能力は突き詰めれば自社ブランドを確立する要素となるのです。

他社からコピーされづらく、競合がたくさんいる中で優位性を確立できる組織能力/組織文化。この強化を外部の教育サービスだけに任せると、真の組織能力は得られないと思っています。

組織能力を鍛えるタイミング

自社ならでは、を決めるコアコンピタンスの部分ですから
「うちの組織にあった社員を鍛えてもらおう」「教育のプロに任せよう」
ではなく、社内で強化する仕組みそのものを持つべきなんです。

具体的に言うと人材育成の文化です。

同じようなビジネスモデルの他社がたくさんいる中で、競争優位性を築く重要な要素です。自社で、「何を、どのように、どんなふうに教えたら自社に合った社員になるのかを理解している」ことは確実な強みです。「社内で人を育てられる」価値はとてつもなく高いと思っています。

スタートアップの規模では、育成文化について深く考えずともやって来れたと思います。


・社長と距離が近く、考えは直接共有されてきた
・共に創業時にいろいろなことを経験してきた


このパターンがほとんどなので、暗黙知のようなものが担保されています。しかし、問題は模索期の先、拡大期です。


組織拡大に伴って、様々な価値観や力量を持った人が入ってきますよね。優秀で自分でどんどん成長してくれる中途社員もいれば、他業種からの転職や新卒で1から自社の理念や文化を教え、鍛える必要がある人もいます。

しかし、多くの会社がこのステージになってから気づきます。


「自社に合った人材ってどう育てれば良いのだろう?」
人材を自社で育てる仕組みを持たずに組織拡大を迎えてしまうのです。


社内の人材育成にしっかり取り組んできて、その知識や方法を蓄積してきた会社と、社内人材の育成を外部に頼みっきりで社内に何の蓄積もない会社。この両者の5年後10年後の組織力を比べると、その差は歴然です。

この育成に本格的に取り組むべきタイミングは組織拡大の前半だと思っています。今後もっと多くの社員の育成を担えるよう、早いうちから知識や方法を持っておくことが望ましいです。どんなに人数が増えても、「伝えるべき内容はこれで、伝え方としてはこれだよね」と社内の育成に関して目線を揃えておけば、その組織能力は揺らぎません。

育成サイクルはあるか

もちろん、外部研修そのものを否定するわけではありません。重要なのは、それを受けた後にどうしているかだと思っています。個人の学びとして止まっていないか、という視点です。

注目して欲しいのが「仕組み」の部分。こんな人材になって欲しい、これを大事にして欲しい、はあってもそれらをどう伝えていくかに悩む経営層は多いです。

例えば、経営幹部が研修を受ける、ここで止まっていては個人の成長止まりです。その知見を社内に蓄積し、どう育成に落とし込んでいくか。その後の人材育成にどう活かしていくかです。


これがベンチャー経営の本質だと思います。競争優位性がある会社は、
やはりこの組織能力も高いです。


経営層が自社の自社人材が目指す姿を思い描けていて、それ以上にどうしたらそれに近づけるのか、どのような育成方法を取れば良いのかも分かっているのです。


世界にはエクセレントカンパニーと言われている企業がいくつかありますね。例えばP&G、ユニリーバ、GE。

日本で言うとサイバーエージェントなどが思い浮かびます。こういった会社は、実は研修ベンダーがなかなか入り込みにくい会社だったりします。その理由は、やはり自社独自の育成の仕組みが確立されているからです。

インプットの教材が自社にあり、それを使って自社の社員が講師として教えていく。このサイクルを築いています。どのような手法で何を語り、何を紐付けるべきか分かっているのです。


タイムリーな分野、専門分野を外部研修で頼むことはあっても、
・マネジメントとは
・マネジャーへの役割期待
・役割を担うために必要なこと
ここは社内で完結しているのです。


競争優位性を作り地位を確立するために、「社内に育成サイクルがあるかどうか」は
大きな要素になっています。

このような会社は「外部に頼らなくてもできるので大丈夫です」のスタンスではなく

「外部に頼るべき領域ではないと思っています」という意思を持ってこの選択をとっています。

パクリパクられが当たり前のビジネスモデルで長く戦い続けるのは困難です。ですから、「これは真似できないだろう!」と自信を持てる組織能力を築き上げる。
ベンチャーの経営はこの視点を持つとめちゃくちゃ強くなります!


自社ならではの組織能力を強化したいが方法が分からない、そういった経営者の方を支援して多くのベンチャー企業の個を輝かせる、これが私のミッションだと思っています。

水谷健彦
記事を書いた人
水谷健彦

リクルートでHR領域でのキャリアをスタートし、社員20名の創業間もないリンクアンドモチベーションへ。急成長する組織で事業部長として上場を迎えた。その後取締役を務め、上場企業としての舵取りを経験。取締役退任後、2013年にベンチャー特化の組織コンサルティング会社JAMを創業。 経営をしながら、現在も成長著しい複数の企業でボードメンバーも務めている。AnyMindには上場の2年前から日本およびグローバルの人事責任者として参画。上場に向けた組織基盤を構築し、時価総額500億以上のネクストユニコーン企業の組織強化をリード。AI領域トップランナーのPKSHA Technology、クラウドインテグレーション領域で上場したSharing Innovationでは社外取締役を務めており、上場企業の組織戦略について日本で有数の経験を持つ。

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