ベンチャーのマネジャーが最初に直面する課題はほぼこれ、という話

ベンチャーのマネジャーが最初に直面する課題はほぼこれ、という話
目次


成長企業で働く管理職がぶつかるマネジメント課題「部下育成。」自分で数字をつくりながらマネジメントもしなければいけない、でも時間がない…。
そんな成長企業の管理職に勧める、効率の良い指導法とは?


みなさんこんにちは。マネディクサービス監修者の水谷です。

私は20代でリクルートに入社&組織づくりに関わりはじめ、30代では創業当初のリンクアンドモチベーションに参画。ベンチャー/成長企業に身を置きながら、同じような環境のお客様をたくさん支援してきました。

こうして20年以上組織づくりに関わってきた私には、

「ベンチャーのマネジャーが最初に直面する課題はほぼこれ」

という確信があります。

この課題に経営陣がどう向き合うか。会社がどう関わるか。
その結果で、会社の成長スピードは大きく変わると言っても過言ではないと思っています。


  • チームの目標達成vs メンバーの育成
  • 経営者とマネジャー、それぞれの課題への向き合い方
  • メンバー育成の指標

チームの目標達成 vs メンバーの育成

もう本当にこれです!!この両立に多くのマネジャーが悩みます。
「うちのマネジャーはできている」と感じる経営者の方、ぜひ誇ってください!!

多くの企業にチーム目標がありますね。

メンバーそれぞれの力量にもよりますが、例えばマネジャー1人、メンバー4人の組織では目標数値の比重は20:20:30:30や、25:25:25:25あたりに落ち着きます。
マネジャー個人の目標は0で、マネジメントに専念することが理想です。
メンバーに目標を達成させるべく、例えば営業であれば商談前の打ち合わせ・商談への同席・フィードバックなどを行います。マネジャーは「達成へ導くこと」が仕事です。

ただ!実際多くのベンチャー企業ではそもそも上記の目標設定になりません。

「マネジャー50、残り50を4人のメンバーで割り振り」なんて事態もよく発生しています。これは望んでそうなっているわけではありません。

多くのベンチャー企業は数字を作れるエースプレイヤーが評価されて
マネジャーになります。そして新たなエースが生まれ、
数字を作っていくことが期待されます。


しかし、そんなに層が厚いわけがないのです。
エースが抜けた穴はすぐには埋まりません。


ですから、必然的に数字を作れるマネジャーが「売り続ける」という選択肢を
とらざるを得ません。自分が売らないとなると一気に営業力が落ち、
チーム目標を達成できなくなるからです。 ここで課題に直面します。


それが「チームの目標達成」と「メンバー育成」の両立です。

「チーム目標を達成して結果を出したい!」
「そういえばメンバーの数字はどうだろう?」
「でも数字を作らないと自分の評価にも関わるし」
「そういえばメンバーが苦戦しているお客様がいたなぁ」
「でも自分のお客様で手一杯…」

自分の数字を作ることとメンバーを育てること、この2つはいわばシーソーです。
片方に力をかけすぎると、片方が疎かになりがちです。


この課題を抱えたマネジャーを放置することは、経営にも後々影響が出てきます。
マネジャーに任命した人物に対しては当然経営も期待していますよね。

「数字を作れる人物が指導するんだから、その能力は指導するメンバーに受け継がれるはずだ!」
「半年後の業績もメンバーの成長も任せておけば間違いない!」

こう思うわけです。

しかし、現場ではこの課題を多くのマネジャーが抱えます。

数字を作ることをがむしゃらに頑張るマネジャーもいれば、メンバー育成に力を傾けるマネジャーもいますが、多くの場合は数字をつくることに傾倒していきます。
数字が積み上がらなければ、メンバーを育てる余裕なんて持てない、が現場のリアルです。


この問題解決を経営が放置していると、半年後、ある程度の数字は確保しているものの、

・メンバーが育つスピードが期待よりはるかに遅い
・マネジャーのプレイング比率が異常に高い

このような事態になります。

「エースだった社員をマネジャーにしたはずなのに何故なんだ!」と思うかもしれませんが、任命しただけでは不十分なのです。

経営者とマネジャー それぞれの課題への向き合い方

この状況を抜け出すためには、経営側とマネジャー側、それぞれが意識すべきことがあります。

まずは経営側。

この立場であれば、マネジャーに「数字を作ってね!」と要望したくなるのは当たり前です。それは求め続けましょう。しかし、重要なのは数字を要望し続けるのと同時に、「メンバー育成への期待」も示し続けることだと思っています。

「任せたよ」だけでなく、時に両立できているのかの目線でマネジャーの仕事ぶりを見てあげます。この視点を持てば「苦労しているんじゃない?」「両立に向けてアドバイスしようか?」など支援的なコミュニケーションを取れるはずです。そもそも経営がこの難しさを理解してくれるだけでマネジャーたちは救われます。

・チームの目標数字のバランスはおかしくないか。
・マネジャーが数字を持ちすぎていないだろうか。
・比率は半年後も同じになっていないだろうか。

以下の図のように目標の配分が変化しているかに注目すべきです。


「数字をつくれば良い」ではなく「両方頑張って欲しい」と言い続けることが重要です。
数字を作れるマネジャーはもちろん頼もしいのですが、メンバー育成を全くできないマネジャーだとそれはそれで1年後が不安。これが経営側の正直なところです。

組織を拡大させる上では、

① マネジャーへの期待を明確に示す。
② 数字と育成の両方を要望し続ける。
これが経営側に求められます。


続いてマネジャー側。

重要なのは、メンバー指導の方法をきちんと設計すること。最初はプレイングの時間が
多いですから、個別に指導する余裕は持てないでしょう。

でも、だからといって「とりあえずやってみて」「何かあったらサポートするから」という放置プレイではなく、最初はメンバーに自分の商談に同席してもらうところから
始めましょう。1人で数字を作ることをしゃにむに頑張らせるより、
上司の良質な商談への同席の方がよっぽどメンバー自身の学びになります。
これを繰り返すことはマネジャーにとっては負荷は低いはずです
(数字つくりとの両立が狙える)。

また、そこでの学びをさらに深めてもらうためには、
商談後の少しの時間を大事にしてください。


例えば「商談後に3つの質問をすること」を同席のルールとします。
これは「なぜあのタイミングで話題を出したのか」「あの質問の意図は何なのか」
といった目線での質問を指します。
商談の進め方について着目しながら同席してもらうことで、学びの質はグッと高まります。
商談プロセスを1から教える時間は取れずとも、
同席させる1時間+商談後の15分で十分メンバー育成は可能です。

自分の数字を作りながらメンバーを育てるベンチャーのマネジャー。
指導の時間を捻出する、のではなく「自分の時間を一緒に過ごさせることで学ばせる」
この考えを持って欲しいです。

(商談前の企業下調べもメンバーに課するのをお忘れなく!)

メンバー育成の指標

前段で、忙しいベンチャー企業のマネジャーに実行してほしいメンバー育成の手法をお伝えしました。「メンバーマネジメント」として自分のスケジュールをそのためだけに大きく割く必要はないのです。

かといって「全部見て覚えて」「習うより慣れろ」では成長速度に問題があります。

自分で数字を作ることを諦めず、でもメンバー育成も諦めない。
ベンチャーのマネジャーこそ、両方同時に追う姿勢が求められます。

では「商談同席→商談後15分のフィードバック」というやり方でメンバーの成長はどう測るのか。それはやはり商談後にメンバーから投げかけられる問いの「質」だと思います。

同席の始めの頃と比べて

「鋭い質問をするようになったなぁ」「そこを気にして聞いていたのか」

というマネジャー自身の感覚は大きな指標です。

始めの頃は「どうして〇〇なのか」といった質問ベースだったものが、「あれはこういう意図があってのことですよね」という確認ベースになると、よりその成長を感じられますよね。


ベンチャー企業のマネジャーはその環境ゆえ、自身の成長はもちろんメンバー育成を求められる難易度の高いポジションだと思います。ベンチャーはそもそも変化の幅が大きかったり、スピードが早かったり。何十年と続いてきている中小企業や大企業と比べ、成長の角度も急なものを求められています。

そんなベンチャー企業の成長を左右するのがマネジャーです。管理職が変われば組織の成長は2倍にも3倍にも加速します。

(自身の成長と同じように部下の成長を喜べる、そんなマネジャーが増えれば経営側も何と頼もしいことでしょう!)


私もマネジャー時代がありましたから、その大変さは身を持って実感しています。しかし二兎を追わなければ二兎を得ることはできません。

目の前の数字もメンバーの育成も、両取りできるマネジャーが増えることを願っています。ほんの少しでもこのコラムがお役に立てれば嬉しいですね。

水谷健彦
記事を書いた人
水谷健彦

リクルートでHR領域でのキャリアをスタートし、社員20名の創業間もないリンクアンドモチベーションへ。急成長する組織で事業部長として上場を迎えた。その後取締役を務め、上場企業としての舵取りを経験。取締役退任後、2013年にベンチャー特化の組織コンサルティング会社JAMを創業。 経営をしながら、現在も成長著しい複数の企業でボードメンバーも務めている。AnyMindには上場の2年前から日本およびグローバルの人事責任者として参画。上場に向けた組織基盤を構築し、時価総額500億以上のネクストユニコーン企業の組織強化をリード。AI領域トップランナーのPKSHA Technology、クラウドインテグレーション領域で上場したSharing Innovationでは社外取締役を務めており、上場企業の組織戦略について日本で有数の経験を持つ。

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