専門職特有の「徒弟制度」から、カルチャーフィットに根ざした人材育成へ - 組織の拡大と成熟を両立するためのマネジメント強化 -
徐様
セブンセンス税理士法人を含む複数法人を束ねるセブンセンスグループの代表。セッションにはオブザーバーとして参加し、経営視点での総評やフィードバックを担当。
井本様
セブンセンス税理士法人の現場全体を束ねる代表社員。マネディクでは、マネジメントセッションのメインファシリテーターを務め、マネジメント層の目線合わせを自らリードする。
大野様
セブンセンス税理士法人で、複数チームを統括するディレクター。マネディクでは、参加者として積極的に経験や課題をシェアし、自身と組織のマネジメントをアップデートするきっかけを作り出している。
組織を拡大する中で、専門職特有の「徒弟制度」に限界を感じる
最初に、簡単に会社紹介をお願いします。
徐様:
弊社セブンセンス税理士法人は、法人・個人向けに会計・税務サービスを提供しています。個人経営の税理士事務所が多い中で、当社は法人化をし、東京では赤坂・上野の2拠点を構え、さらなる事業拡大に取り組んでいます。
また、業界内の常識に囚われない先進的な取組みを心がけており、中でも多言語対応と、セキュリティレベルの高い支援体制、DX化による高い生産性が強みです。
例えば、多くの士業事務所は日本語のみの対応ですが、当グループは9か国語に対応し、数多くの外資系企業や外国人経営者を支援してきた実績があります。また、業界に先駆けてITシステムを導入し、万全なセキュリティ体制を構築。DX化を促進して事務的な作業を効率化することで、顧客価値の最大化に取り組んでいます。
組織としては、職能横断型のチームを「マネジャー」が束ね、その上に複数のチームやマネジャーを統率する「ディレクター」、そして「代表」が続く構成になっています。
マネディクを導入する前、組織についてどのような課題を感じていましたか。
徐様:
専門職特有の「背中を見て学べ」というマネジメントスタイルが、組織の拡大に耐えられないことに課題を感じていました。
税理士業界は、主に資格を持った専門家によって構成されています。有資格者は「一定の基準を満たしている」という意味で上下がなく、平等に扱われる反面、「同じ資格を持っているのだから、同じ業務ができて当たり前」という風潮も生まれやすいんです。
当社では、資格の有無が職位に直結するわけではありませんが、たとえ資格を持っていなくても専門的なスキルで生計を立てていることに変わりはないので、当然のように資格を持つメンバーと同等の業務レベルを求められます。
そのため、上司や先輩は手取り足取り業務を教えるというよりも、案件を引き継いだり、渡したりする役割に留まりがちです。そして、メンバーは彼らの姿を見ながら、自分で知識を吸収して案件に対処していく。全員が専門家として同じ土俵に立っているからこそ、自ら必要なスキルを学び取っていくことが、暗黙のうちに期待されているんです。いわば現代版の「徒弟制度」といえるかもしれません。
井本様:
それが必ずしも悪いというわけではなく、むしろ人材が飛躍的に成長するケースもあります。一定の経験を積んだ後であれば、自分よりも優秀な人材の長所や強みを分析して参考にすることで、学びの幅が広がったり、深まったりするはず。私も、上司や先輩の背中を見て学んだことはたくさんありましたから。
ただ、組織の規模が大きくなり続ける一方で、業界内で経験者採用が年々難しくなってきて未経験人材の割合が増し、いよいよ徒弟制度の限界を感じるようになったんです。全く業務に触れたことがなければ、「背中を見ろ」と言ったところで、何をどのように学べばいいかすらわからないですよね。
徐様:
もちろん、未経験でも時間をかけさえすれば、徒弟制度で育成できるかもしれません。社員同士の距離が近い、会計事務所の規模だとなおさらです。でも、私たちは一会計事務所ではなく、法人として組織規模を拡大している最中でした。積極的に事業拡大に取り組んでいたからこそ、本腰を入れて人材育成を行う必要があったんです。
成長スピードと組織カルチャーを両立できるマネジメントを求めて
人材育成を見直そうと決断された時、まずどのようなことに取り組まれたのでしょうか。
徐様:
徒弟制度から脱皮し、いわば「一般企業のマネジメント体制」に近づける努力をしました。成績優秀者を表彰するスキル面の制度を作ったり、組織面でも細かくチーム編成をしたりと、思いつくものは手当たり次第に施策を実行しましたが、望んでいたような成果は得られなくて……。今思えば、私も井本も徒弟制度で育ってきたので、そもそも「マネジメントとは何か」を知らなかったんですよね。
井本様:
ほかにも、年に数回、私と徐が社員一人ひとりと30分ずつ面談していたこともありました。でも、いつの間にかメンバー数が増え、数日かけても終わらなくなってしまって。結局、どの施策も組織の成長スピードにマネジメントのレベルアップが追いつける実感が持てませんでした。
徐様:
そうやって数年社内で試行錯誤する間に組織はさらに拡大し、いよいよ手に負えなくなってきたので、外部のプロに頼ることにしたんです。
数あるサービスの中で、マネディクを選んだ理由を教えてください。
大野様:
私が、マネディクを運営するJAM代表 水谷さんのセミナーに参加して、感銘を受けたことがきっかけです。
私がセブンセンスに入社したのは、まさに徐さんと井本さんがマネジメントの育成に四苦八苦していた時期。私自身、マネジメントは各社員のテクニカルスキルを伸ばすためだけではなく、高いモチベーションで生き生きと働くために必要なことだと考えていたので、二人の取り組みには共感を覚えました。ただ、私も例に漏れずマネジメントされた経験がないので、自分でもマネジメントの正解がわからないまま社員を統率する立場にいたんです。
そんな時に水谷さんのセミナーを受けて、これなら自分も納得できるし、組織のカラーにも合いそうだと思い、二人に提案して一緒にトライアルを受講しました。
井本様:
トライアルでは、身に覚えのある組織課題が「ベンチャー企業は」という主語で説明されていて、腑に落ちたことが印象に残っています。私たちはベンチャー気質のある会計事務所なので、これまで抱えていた悩みは成長過程の企業にとって仕方がないことだと分かり、「悩んでいるのは自分たちだけじゃなかったんだ」と思えるようになったんです。
徐様:
私にとっては、カルチャーフィットを踏まえたマネジメントができることが魅力的でした。ほかのマネジメント関連のサービスもいくつか検討しましたが、決まったルールや型に組織を当てはめていくスタイルのものが多かったんです。社員の価値観や個性による余地を持たせず育成し、効率重視で生産性を上げていくスタイルですね。
でも私は、生産性を上げる以前に「楽しく働く」という組織のカルチャーを大切にしたかった。専門職といっても、得意な分野やスキル、レベルは人それぞれ。その個人差を無理に揃えるよりも、個性を活かして働けた方が絶対に楽しいですよね。
なので、組織のカルチャーを大切にしながら、マネジメント体制を構築できるマネディクを導入することに決めました。
マネジメントに関わる日頃の悩みに名前がつき、対応しやすくなった
実際に利用し始めてから、どのような変化を感じていますか。
大野様:
私は、マネディクを通じてこれまで漠然と抱えていたマネジメントの悩みに名前がつき、一つひとつに対処しやすくなりました。
マネディクは、抱えている問題や難しい状況の新しい見方や切り口を学べるツールであり機会だと思います。自分がうまく言語化できなかったり、捉え方がわからず処理できなかった事柄が、動画で名前と一緒に説明されるので、モヤモヤしていたことの解像度が一気に変わり、「こういう風に解決できるかも」という、対応策のヒントが得られます。
例えば、「仕事の任せ方」という単元では、「階段設計」という概念を知ったことで、指示の出し方の方向性が掴めた気がしました。もともと私は「業務の指示が雑だ」と周囲に指摘されていたんですが、かといって具体的にどうすればいいかはわからなかった。
でも、業務プロセスをいくつかのフェーズ(階段)に分けて、相手の現状よりも少しストレッチした業務を任せるという「階段設計」の考え方を学んだ時に、自分はそもそも相手の現状を把握してなかったと気づけたんです。相手の今の状態がわからないから、相手のスキルや志向に合わない業務を割り振ってしまい、それが指示の雑さにつながっていたんだと。それからは、相手の現状をよく見て、指示内容を考えるようになりました。
日々のマネジメントに、すぐ学びが活かされているんですね。
大野様:
はい。フィードバックの仕方も変わりましたね。これまでは、相手にとっては耳が痛いことだけど、一緒に仕事をする上で伝えなければいけない……ということをどのように伝えるべきか、葛藤を感じていました。
でも、ある回で「フィードバックは、栄養(Food)を与えることだ」という話を聞いて考え方が変わったんです。フィードバックはマネジメント側の要望を伝えるためだけではなくて、相手の成長を促すために必要なものなんだと捉え直すことで、フィードバックに対する心理的な障壁がなくなりました。
フィードバックの伝え方についても、マネジメントセッションで他のマネジャーが実践していた方法を参考にして、月次のMTGを設けてまとめて伝えるようにしています。以前は思いついたその場で言ってしまい、僕自身考えがまとまっていなくて上手く伝わらないことや、業務中に突然「ちょっと良い?」と呼び出すことでお互いに緊張感が走ることも多かったのですが、定期的な場を設けることで、きちんとコミュニケーションが取れるようになりました。
ファシリテーターとして参加している井本さんは、どのような変化や手応えを感じていますか。
井本様:
マネジメントセッションに参加しているマネジャーの一人ひとりと、コミュニケーションを取るようになりましたね。かつて年に1、2度、社員と個別面談をしていたものの頓挫したと言いましたが、それ以来は、自分から1対1で話そうとしていなかったんです。
でも、今回ファシリテーターとして、各マネジャーの動画視聴後の感想を読んだり、マネジメントセッション中に意見を聞いたり、その後のフォローアップMTGで話したりする機会が増え、ようやくそれぞれの悩みや、今考えていることがわかるようになってきました。
経営層の本気が伝わり、多忙な中でも組織課題に向き合うマネジャーが増えた
ほかにはどのような変化が見られますか。
大野様:
マネディクに取り組むようになって、マネジャー陣の視座が上がってきているように思います。この間のセッションで「経営者視点を持つのは難しい」という発言があったんですが、それは逆を返せば「経営者視点を持とうとしている」ということ。「自分のチームがうまく回っていればいいや」という考えから脱皮して、マネジメントに意識が向いてきているという大きな変化を感じています。
井本様:
複数のマネジャーから、「マネジメントに対してポジティブになれました」という感想をもらいました。おそらく彼らはそれまで、業務や組織に対してモヤモヤした思いを抱えていても、聞いてもらえる場がなかったんです。でも、マネジメントセッションという伝える場ができて、「どうすれば良くなるか」と解決策を話し合えるようになったので、前向きに考えられるようになったのではないかと。
仕事柄、マネジャーの皆さんはかなり多忙で、マネジメント研修に時間を割くことに抵抗感もあったのではないかと推測します。その中でも前向きな反応が生まれたのはなぜなのでしょうか。
大野様:
私は、ファシリテーターの本気度が伝わったからだと考えています。
代表社員である井本さんが現場の課題を自分ごととして捉え、本気で組織を変えていこうと覚悟を持ってファシリテーターに取り組んでいる様子や、セッション中の熱量が高い姿を見ていると、参加する側はやはり「しっかりやらなきゃ」と気が引き締まりますよね。
井本様:
実際、私はいつも必死です(笑)。人生でファシリテーターという役割を担うのは初めてなので、いつも挑戦を楽しみながら臨んでいます。組織を変えようとするなら、まず経営層が変わるべきだという覚悟はあるので、セッションを有意義なものにするために最大限のことはしているつもりです。
動画視聴の上での各人の気づきなど、全員のものを見た上でセッションで話す順番や内容を組み立てるべきだと考えているし、セッションではポジティブな空気で議論を行いたいので、雰囲気作りにも気を配っています。
ファシリテーターや経営層の覚悟が伝わることが大切なのですね。そのほかに、マネディクに取り組む際、工夫されていることはありますか。
井本様:
マネジメントセッションのフォローアップは工夫しています。セッションは月に1回なので、その間にもマネディクでの学びを浸透させたくて。
例えば、セッション後は当日中に振り返りを記入してもらって、その中で気になる感想を書いた人を「ウォーキングMTG」に誘っています。会社の近くの神社まで往復30分間ほど歩きながら、マネジメントセッションでわからなかったことなどをヒアリングするんですが、深い本音が聞けて、組織体制のヒントを得られることもあるんです。
大野様:
拠点ごとに振り返りのランチ会も開催しています。セッションの内容についてざっくばらんに意見交換することで、共通言語の浸透にも役立っています。
マネジャー同士の信頼関係が生まれ、組織の縦割り主義が緩和された
セッション以外の場でも工夫されているわけですね。社内の他の取組みともうまく連携されていますが、マネディクで当初予想していなかった意外な効果などがあれば教えてください。
大野様:
マネジャー同士の信頼関係が生まれることで、組織の縦割り主義が緩和されましたね。
私たちの仕事は、専門性が高い分、基本的にはチーム内で完結できてしまいます。そのような状況下で、他チームと積極的に接点を持とうとする人は少なかったように感じます。
でも、マネディクの場では全員がマネジメント初心者なので、自然と自分の悩みを打ち明けます。「なんだ、みんな同じようなことで悩んでいるんだな」「失敗したのは自分だけではなかったんだ」と感じられることで、互いの心理的距離が縮まって、日頃の業務でも連携しやすくなりました。
井本様:
定期的に話す機会があるとそれぞれの得意分野が分かってくるので、マネジメントセッションを通して、独立していたマネジャー同士が協力し合うようになりました。実際に、新人教育が得意なマネジャーとプレイングスキルが高いマネジャーが連携して、新人教育のパイプづくりができた例もあります。
大野様:
ノウハウが共有できるようになって、全体的に業務を効率化できていますよね。ほかにも、マネジャーとメンバーのパフォーマンスを最大限引き出せるよう、配置替えを行ったこともあります。
井本様:
そうそう。配置替えは「程度問題」をテーマに扱ったセッションがきっかけでした。何事も「0か100か」で判断するのではなく、その間の「程度」で判断する、つまり90前後の「いい塩梅」を見つけることが大事だという内容だったんですが、その話を踏まえてあるチームに目を向けた時に、90どころか160の成果を出そうとしていることに気づいたんです。
高い目標を掲げるタイプのマネジャーとメンバーが組み合わさっていたので、互いに高め合い過ぎて逆に効率が悪くなっていたんですよね。そこで、そのマネジャーをもう少し成果を伸ばして欲しいチームに配置替えしました。
こうしてマネディクを通してマネジャーの特性が見えてきたことで、組織のポテンシャルを発揮しやすくなってきています。ほかにも、このマネジャーとこのチームの組み合わせは面白いかもしれないと、様々な考えが浮かんでくるようになりました。
マネジャー全体の視座を上げ、さらに「ポジティブ」な組織を目指す
今後、マネディクの取組みを通して目指したい組織運営のあり方を教えてください。
井本様:
現場の意見を吸い上げながら、さらにポジティブな組織を目指していきたいですね。たとえマネジャー同士の信頼関係ができていても、やはり当人同士だったり、現場だけではうまく対処できない問題もあります。でも、その問題を誰かが抱え込むのではなくて、組織の問題として解決していきたいと思っています。マネディクをきっかけに悩みを相談、共有する風土ができてきているので、このチャンスを活かして、より前向きで生産性の高い組織にしていきたいです。
徐様:
現状、すでに「楽しく働く」組織に近づきつつあるようですが、今後はさらに各マネジャーが視座を上げて、組織全体を見られるようになって欲しいです。オブザーバーとして参加している私から見ると、マネジメントセッションが業務相談の場になってしまっていることもあるなと感じます。具体的な各論の話に時間を割いてしまう傾向があるというか。
もちろん、そのおかげで現場の課題を共有して、組織の改善につなげられているのですが、それは井本などファシリテーターの力に頼っている部分が大きい。個別の事象を組織の視点で捉え直し、主語を「私は」から「セブンセンスは」に置き換えて話せるマネジャーが、もっと増えるといいなと思います。
大野様:
そのためには、セブンセンス流のマネディク活用方法を探っていくべきなのかもしれませんね。例えば、さっき話に出た「程度問題」は、白黒の判断が求められる世界に生きている私たちにとってはなかなか捉えづらいテーマで、議論を進めるためには一度具体的な現場の話に落とす必要がありました。なので、難しいテーマはセッションを2回に増やすなどして、具体的な事象を話し合う回と、組織全体の観点で考える回を設けるのも良さそうです。
最後に、マネディクの導入を検討されている企業様に向けて一言メッセージをお願いします。
大野様:
マネディクは、否が応でも自走できるようになる、本質的なサービスです。コンサルティングの本質は、コンサルタントがいなくても良い状態にすることだと、私は思っています。まさにマネディクは、その思想に基づいてサービス設計されています。
その分、参加者の能動性は問われますが、組織課題に向き合う覚悟ができていれば、想像以上の変化を感じられるはずです。
井本様:
「組織を変えるんだ、私たちは変わるんだ」と、本気で思っている企業なら、ぜひ検討して欲しいですね。自分たちで取り組む分、組織に本質的な変化が生まれるので、多忙な中であっても、時間を捻出して取り組むだけの価値はありますよ。
設立 | 2019年 |
連結従業員数 | 約250名(取材時) |
事業内容 | 法人決算及び税務申告業務 相続税申告業務 給与計算・年末調整業務 事業所税申告業務 個人確定申告業務 会計コンサルティング及び記帳代行業務 償却資産申告業務 |