「強い者だけが残る」からの脱却。マネジャー陣の劇的な変化で高まった組織の生産性
株式会社揚羽/代表取締役社長 湊剛宏
1992年リクルート入社。新卒採用、中途採用、教育研修の営業を7年間経験。
1999年テレビドキュメンタリー制作会社に転職。AD、ディレクター、プロデューサーを経て、2001年揚羽プロダクション(現株式会社揚羽)設立。
今回は、株式会社揚羽 湊代表と当社水谷との対談形式でお届けします。
管理職育成の支援を最初にJAMへ依頼いただいたのは約5年前。何をきっかけに管理職がどう変わったのか、管理職育成の取組みが現在どう発展し定着しているかを伺いました。
100人の壁を超え、300人の組織を目指す
水谷(以下水色文字):事業としてはずっとブランディング(コンサルティング、クリエイティブ、ソリューション提供)支援ということですが、ここ数年で事業の変化はありますか?
湊様(以下黒文字):ここ数年だと大きくは変わっていないです。リクルーティングに関わるものが4割、そのほかコーポレートに関わるものが6割といったところです。
創業期の事業は動画制作がメインだったかと思いますが、今は一気通貫のブランディング支援になっていますよね。
そうですね。今、動画制作は全体の25%ほどになりました。一時期はリクルーティング案件がほとんどだったんですが、最近は、「ミッション・ビジョン・バリューをつくる」「企業理念をつくる」「つくったものを社内に浸透させる」といったインナーブランディングやサイト制作などのコーポレート案件が増えてきました。
インナーブランディングの事業は確か後発のものですよね。もう会社の大きな事業の1つになっていますよね。現在、会社規模やマネジャーの人数はどのくらいになりました?
全体だと130人くらいです。ファーストラインマネジャー(※)は20人くらいで、その上に次長、部長、取締役が合わせて15人ほどいます。
今後300人の組織を目指すにあたって、マネジャー60人の育成が必要だなと思いながらずっと取り組んでいます。
※メンバーを直接見る、現場に近い管理職(一般的な企業では課長相当)を指す。
「プレイヤーとマネジャーは別職種」という気づき
現在「マネディク」を導入いただいていますが、一番最初はマネジャー向けの集合型研修だったじゃないですか。5年前くらいですが、覚えていますか?
覚えていますよ(笑)内容に衝撃を覚えましたから。
サラリーマン時代、僕はリーダー経験はあったもののマネジメントをやったことがなくて。メンバーは2人いたものの、実際はプレイヤー3人が集まっているだけの状態。僕自身マネジメントを知らなかったし、社内にもマネジメントのお手本にできるような人は少なかったですね。
揚羽でも5年前はまさに同じような状況でした。ほとんどが名ばかりのマネジャーで、プレイヤーとしては優秀でもマネジメントの知識がなくて、経験や力量が不足しているメンバーの気持ちが理解できない。
自分はできるから、メンバーに「なんでできないの?」「簡単じゃん」と言ってしまうような状況です。そしてメンバーが疲弊して我慢ならなくなって辞めていくという悪い流れ。離職率が20%代で高止まりしてしまった3年間もありました。
そんな課題感があった時に、「マネジメントとはなんぞや」という内容の研修をお願いしましたね。
折り紙を使った研修「仕事のタスク出し(※)」が印象的だったという話は、ずっとしてくださってますよね。
※仕事のタスク出し:メンバーの力量や業務の難易度を踏まえ、本人にとって少し背伸びな仕事を、階段設計して任せて成果まで導くことを指す。メンバーの成長と組織の生産性を両立するために必要な「任せ方」スキル。
あれはまさに目から鱗でした。プレイヤーとマネジャーはもはや別の職種なんだと全員が腹落ちした時でした。そこからですよね、マネジャーが目に見えて変わったのは。「マネジメントをしなきゃいけない」と。
研修の中で、水谷さんにも「ベンチャー企業の成長はファーストラインマネジャーにかかっている」「会社が成長しないのはマネジャーのせいだ」と言われ、社長の私も背筋が伸びました。プレイヤーの役割認識のままでマネジャーを任せてもそれは機能しないよな、と。そこから相当変わりましたね。
揚羽の理想のマネジメントをつくっていく仕組み
マネジャーの育成はこれまでにどんなことをされてきましたか?
本格的に育成を始めたのはJAMさんのメソッド導入後です。集合型の研修をやるまで何もしてこなかったし。研修以降はマネディクをフル活用して、社内で管理職育成の仕組みをある程度廻せている実感があります。
本当に嬉しい言葉をありがとうございます。研修やマネディク内の印象的なワードを揚羽さんの「羅針盤(※)」に採用いただいたんですよね?
※羅針盤:揚羽における社員の行動指針が体系化されたもの。全社員向けと、マネジャー向けがある。各項目の簡単な解説のほか「あおむしくんの行動(悪い例)」と「揚羽の行動(良い例)」まで示されている。
そうです。20個くらいあって、その中のワードは研修でもらった言葉や、今使っているマネディクの言葉からとってきていますね。先ほどの「仕事のタスク出し」もそうです。
今、それを使って社内で「揚羽のマネジメントとは」の目線合わせの場を設けていると聞いていますが。
まず、毎週マネジャーMTGの際に、羅針盤の1テーマを全員で読み合わせしています。その後にグループワークで経験や課題のシェアもすることで、事例のストックや目線合わせが進む。マネジャー同士で話すことで、実践のイメージや改善のヒントを得られていると思います。
素晴らしいですね。マネディクはどのように活用いただいていますか?
こちらも毎週ひとつのテーマを必ず視聴させ、全員が見れるチャットで気づきや実体験の共有をしてもらっています。
共有された内容に対して取締役からコメントをしたり、他のマネジャーからも違う観点が出てきたりして、そのやりとりを見れるようにもすることで、「全員で学んでいく」を実現しています。フィードバックを多視点から得られますし、それぞれのマネジャーがどう考えているのかも知ることができるのが大きな価値ですね。
羅針盤もマネディクも、毎週1テーマずつ丁寧に浸透させている訳ですね。「管理職を内部で育て続ける」をまさに実践されていますね。
仕組みにできていると思います。マネディクはいろいろなテーマ、インプットの動画がありますが、「各自好きに見ておいてね」では効果は出ないと思います。浸透させるためには、インプットの他にアウトプットさせる機会も必須だと思っています。
おっしゃる通り、アウトプットを確約することは成功の鍵だと思います。チャットツールでやっているのは揚羽さん流ですね。「仕事のタスク出し」のほかにマネディクから得たテーマで浸透しているな、と感じるものはありますか?
「曖昧耐性(※)」ですね。これもマネジャー羅針盤に含まれています。実は、研修を受けた後に社内で結構議論が巻き起こった概念でした。
※曖昧耐性:曖昧さに直面した時に、フラストレーションがあるかないか、どの程度感じるかには個人差がある。これを「曖昧耐性」と呼び、高い/低いで表現される。曖昧耐性を踏まえたマネジメントをすることで、依頼や指導がしやすくなる。
曖昧耐性が高い人と低い人は組織にとって両方必要なんですが、「高いほうが良いんだ」という風潮になりかけてしまって。曖昧耐性が低い(=ルールのある細かな作業が得意な方)側の反乱みたいになったんですよ。「低いことが悪いみたいになっているのは納得いかないです」と。
「曖昧耐性が低い人がいなかったらどうなると思っているんだ」っていうことですね。
そうそう。どちらが良いかの話ではなくて、高い人も低い人も両方必要で、環境的にある程度の耐性は持っておいた方が良いってことだよね、と認識を合わせて理解してもらったんですが、それまではもやもやしていたみたいで(笑)
正しく理解してもらえるようになってよかったです。これも社内で目線合わせをしっかりしていただいた結果ですね。
5年前とは大違い。マネジメントを知ることで変わったマネジャー達
さっきもお話に出ましたけど、育成に取り掛かる前のマネジャーたちはどんな状態でしたか?
ちょっと刺激的な表現かもしれませんが、猛獣みたいなマネジャーたちでしたね(笑)「戦闘力は高いが、強い者しか群れに残れない」みたいな(笑)プレイヤーとしてできる人がマネジャーになっているものの「マネジメントとは」を分かっていないから、メンバーに対して「何でできないの?」「やる気の問題じゃないの」「手本あるんだからできるはずでしょ」というスタンスが多かったですね。
できないのは部下本人の問題だと思っていたと。
あと、人事のせいにもしていました。採用時点での見極めの問題だと。採用レベルが落ちているという不満も現場で飛び交っていました。
そのマネジャーたちが、「マネジメントとは」を知ることで変わっていったんですね。
相当変わりました。それまで現場にあった「あいつは使えない」みたいなマネジャー層の会話はめっきり出なくなって、メンバーが成長しないのは自分達(=マネジャー)の責任だと考えるようになりました。
あれは大きな転換でしたね。例えるならば、猛獣のようだったマネジャーたちが羊飼いになったような。
そんなに劇的なレベルでの変化ですか?!
本当にそのレベルです(笑)現場の殺伐した雰囲気が変わり、離職率も改善しました。あのまま管理職育成をしないまま放置していたら、雇っては辞め、雇っては辞めで、強い者だけが残る組織ですよね。それはそれで強い組織かもしれないけど、会社を大きくしていけるスタイルではないですよね。50人くらいが限界かも。ましてや今の時代にも合っていないし、社会に与えられるインパクトもなかなか大きくならないと思います。
売上も今伸びているんですよね。まだまだ成長できる組織体制ができているってことだと思いますし、揚羽さんの事業は労働集約的な要素があるので、組織力は大事ですね。
コロナ禍で少し下がるタイミングはありましたが、その頃に比べると今期は40%近く伸ばせていますね。でも組織の人数は当時とほぼ変わっていないんですよ。
組織の生産性が上がっているということですね。素晴らしいです!
ベンチャーの成長はマネジメントにかかっている。だから、本気で育成する。
今日は貴重なお話をありがとうございました。まさに社内で徹底して管理職を育てる仕組みづくりをしていますよね。
ぜひ、最後にマネディクの導入を検討されている企業様に向けたメッセージをいただければと思います。
個人的には、マネディクをすべてのベンチャー企業にお勧めしたいです。まず、ベンチャー企業の中には、経営者自身がマネジメントを教えられないという企業も少なくないかと思います。マネジャーたちも時間をかけて研修を受けてきていない。だから社内に「マネジメントのなんたるか」を知っている人がほとんどいないということもあると思います。
ベンチャーの成長はマネジメントにかかっているので、会社としてはマネジメントの知識をどんどん得させて、徹底的に経験を積ませるべき。そうしなければ企業って絶対に伸びない。全部の会社がマネディクじゃないといけないわけではないけれど、マネジメント層の育成は絶対にやった方が良い。僕はその手段としてマネディクが一番良いと思っていますね。
だけど、導入するだけでは意味がなくて。本気で育てるんだという覚悟を持ち、インプットとアウトプットを繰り返して浸透させていくが大事だと思うので、うちのような内部での取り組み方はおすすめしたいですね。
熱いメッセージありがとうございます。今後ともよろしくお願いします!
設立 | 2001年 |
従業員数 | 約130名(取材時) |
事業内容 | コーポレートブランディング パーパスブランディング サステナビリティブランディング 採用ブランディング インナーブランディング アウターブランディング 商品・サービスブランディング 等 |