ベンチャーの組織スタイル変更に伴う2つの障害〜トップダウン型からボトムアップ型になるために〜

ベンチャーの組織スタイル変更に伴う2つの障害〜トップダウン型からボトムアップ型になるために〜

2022.06.06 | ベンチャーあるある

組織スタイルとして比較されるトップダウンとボトムアップ。どんなスタイルを選ぶかは組織の特性によりますが、トップダウンだった組織をボトムアップ型へと移行させようとする時、ある2つの要因がそれを阻害することがあります。ベンチャー企業で起こりがちなボトムアップへの障害とは

経営陣などの上層部が決めたことを下層部に指示し現場を動かす「トップダウン」

現場に近い立場の社員から意見を吸い上げ、その意見をもとに意思決定していく「ボトムアップ」

組織によって目指す組織スタイルは様々ですし、どちらかという2択構造ではなく、あくまでもどっち寄りかの話です。完全にトップダウンな組織(逆もしかり)は存在しにくく、トップダウン寄り、ボトムアップ寄りという程度問題として捉えることが前提になります。

以降の文章ではトップダウン型、ボトムアップ型と表記しますが、あくまで「寄り」であることをご理解ください。

今回はこの組織スタイルの移行時に発生しがちな問題について語っていこうと思います。

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トップダウンからボトムアップへ

「現場にもっと経営視点を持って提案して欲しい!」「トップダウンの組織体制を変えていきたい!」

これ、実はよくベンチャー企業の社長が抱える悩みだったりします。実際に私もよく相談されてきました。

スタートアップの段階や会社の規模が小さい時には「トップダウン型」が主流かと思います。経営陣が現場の実情を把握でき、その状況に目が届く状態だからです。

しかし、事業が大きくなり組織が拡大するにつれて、経営陣は現場から遠ざかり、より経営視点を強めていきます。事業の成功だけでなく、さらに上の次元で組織全体の発展を考えるようになるのです。

このようなフェーズになると、トップダウン型の組織からボトムアップ型寄りの組織への移行を模索する企業が出てきます。会社が小さい時には見えていた現場の様子が見えにくくなるので、目の前の問題解決のために現場の視点が必要になるからです。

ただ、この時、この移行が上手くいかないという悩みを抱える企業が多く発生します。事業の成長スピード維持のために、組織方針の変更やスタイルの変更はスムーズに行なっていきたいものですよね。この時の原因はずばり2つに分類できると思っています。

原因がわかれば、それを解消する動きは取りやすいはずです。2つの要因とそれぞれの解消法をお伝えします。

組織スタイル変更の疎外要因①

過去に現場からの提案を一切採用してこなかったパターン

これは率直に、経営側に問題がある場合です。

過去に現場の社員が一生懸命提案を繰り返してきたにも関わらず、その提案をほぼ全て採用してこなかったのであれば、現場の社員は「提案する/意見を言う」ことを諦めてしまった可能性があります。

これまで散々意見を言ったのに全て棄却され、聞き入れてもらえない状況が続くと「もういいや…」「何を言っても無駄なんだ」となりますよね。これが起きているのです。

ボトムアップ型の組織を目指す方針に変わり「これからはなんでも言って!」と言われても、こうなってしまえばなかなか意見は上がってきません。

この状態になってから「どうしてこんなにも意見が出ないんだ?!」と怒っても、その状態を知らぬ間に作ってしまったのは他でもない経営側、社長本人だったりします。

では、こうならないためにはどうするべきなのでしょう。

まずは「承諾率」を意識してみてください。

もちろん100%、全ての提案を受け入れてくださいとは言いません。時に棄却するべき意見があるのは事実ですから。しかし10の意見があったときに通すものが0というのは、提案する側のやる気を削ぐのも明らかです。

これを防ぐために「一部でも聞き入れよう/取り入れよう」と思いながら意見を募ることは重要です。適切な範囲は3〜5割ほどでしょう。その承諾率であれば現場の社員も「提案をしてみよう」と思えるはずです。

ただ、この3〜5割の数字に囚われ質の低い提案を受け入れては会社のためになりません。質の良い提案や提言が多く挙がるよう、社員に経営側から働きかける必要があります。

具体的には「判断基準のすり合わせ」です。

例えば、セミナーの内容を企画する時にまず最初に判断基準を定めます。表では①世の中の興味、②独創性、③実現可能性の3つを置いていますが、この他に挙げるとすると、ターゲットを呼べること・予算に収まること・サービス検討までの距離が短いことなども良いと思います。「この基準でセミナーを企画する」ことが頭にセットされれば、それを考慮したセミナーのアイデアが集まってきます。その提案の中から3〜5割の意見を採用することは難しくありませんよね。

このすり合わせを行なっていないのに

「現場の意見はダメだ」「採用したいと思えるものがない」

と言うのであれば、それは経営側の努力不足と言わざるを得ません。察してくれ、分かってくれで放置しているのに「意見を出してくれ」は、ボトムアップ型を目指す上では組織のためになりません。

組織スタイル変更の疎外要因②

仕事がある程度完成されてきて社員が歯車になっているパターン

ある程度事業が軌道に乗り自分がするべき仕事が固まってきている状況なら、人は考えることを辞めていきます。歯車になると、ただただ自分の業務をこなせば成果が出ると分かっているので、どうしたらもっと成果が上げられるのか、どこを改善したら良いのか、など問題意識を持つことが難しくなっていきます。

よくムリ・ムダ・ムラで3Mとも言われますが、ここに視点が向かなくなっていくのです。では、こうならないためにはどうするべきなのでしょう。

これは「成果を見える化する」を意識してみてください。

リクルートでは、課の単位でP L(損益計算書)を出すという取り組みをしていました。売上のみでなく人件費や総務費が入ったものです。これを見合うことで「自分たちはいくら売上げたのか」だけでなく「何にどれだけの金額がかかったのか」「他の課と比べて利益はどうなのか」がはっきり分かります。

「目標達成=自分たちは頑張っている」で終わらせず「他の課の方が生産性良いな」「自分たちよりも大幅達成している課があるな」と気づきを与えることになるのです。こうなれば創意工夫が生まれます。どんなムリ・ムダ・ムラがカットできるのか、経営視点を持つことにも繋がり、比較することで自分たちの今の位置も認識できるのです。

組織スタイルを移行するタイミングで発覚しがちな2つの事象について語ってきました。現在移行がスムーズにいかない、と課題を抱えている会社様は、おそらくどちらかの状態ですので、それを解消する動きをとってみてください。

冒頭でも述べましたが、あくまでもどちら寄りの組織にするかの話で、トップダウン型とボトムアップ型の真ん中を目指す、場面で使い分けたいなど選択は様々です。両者にメリットデメリットがあるので、どちらの方が優れているのかの答えはありません。

ただ、組織として大きな変化をしようと思う時、「目線が揃っている=判断軸を揃える」や「思考できる環境にしておく=社員を歯車にさせない」は必要な状態です。

人材育成で可能な部分ですので、ぜひそういった人材を増やしたいという場合はご相談いただければと思います。

管理職育成サービス「マネディク」とは

株式会社JAM代表取締役社長 / 水谷健彦

この記事を書いた人

株式会社JAM代表取締役社長 / 水谷健彦

ベンチャー/成長企業への組織コンサルティング経験が300社を超える。組織が急拡大するなかで陥りがちな罠やその解決に詳しい。幹部や管理職育成を最も得意とする。プライベートではゴルフにハマってはや10年のアラフィフ。